「転職できる年齢には限界がある」こんな話を見聞きしたことはありませんか?「転職は35歳限界説」もそのひとつ。これは35歳をすぎると転職ができなくなる、という年齢限界説です。
その他にも「28歳」「30歳」「32歳」など、インターネット上では様々な限界説がささやかれています。転職をしたいと思っても、こうした噂を気にして一歩踏み出せない人は少なくないでしょう。
そこで実際に転職をしている人の平均年齢や、自分の年齢に合わせた転職活動方法など、現代の転職年齢について紐解いていきたいと思います。
具体的には、
- 転職をしている人たちの年齢は?
- 転職は何歳までOK?転職限界とは?
- 職業別の求める年齢は?
- 年齢に合わせた転職活動方法のすすめ
といった内容をお届けしていきます。
転職をしている人たちの年齢は?

まずは「実際に転職している人たちの年齢は何歳なのか」を、実際のデータでみていきましょう。
転職している人の平均年齢は31.7歳
転職サービスdodaが「2019年上半期(1月~6月)に転職した人」の年齢を調査した結果、その平均年齢は31.7歳であるとわかりました。
また男女それぞれの平均年齢では、男性は「32.6歳」、女性は「29.8歳」と少し開きがありましたが、概ね30歳前後で転職している人が多いと見てとれます。
(参考:doda「転職成功者の年齢調査(2019年上半期)」)
転職年齢は25歳~29歳が最も多い
同調査の転職者を年齢別にみていくと、最も多いのは25歳~29歳の層でした。他の年代は「30歳~34歳(24.3%)」、「40歳以上(14.4%)」と続きます。2018年下半期と2019年上半期を比較すると、40代以上の転職成功者が13.8%から14.4%に上昇しているのが分かります。
また厚生労働省が調査した「平成29年雇用動向調査結果の概況」では、もっと細かい転職年齢階級の割合が確認できます。
(参考:厚生労働省「平成29年雇用動向調査結果の概況」 4転職入職者の状況-(1)年齢階級別転職入職率(P14))
以下に転職者の年齢層別の割合を一覧表でまとめましたので、参考にしてください。
年齢層 | 2018年下半期 | 2019年上半期 |
---|---|---|
24歳以下 | 9.8% | 10.1% |
25歳~29歳 | 38.9% | 39.6% |
30歳~34歳 | 24.3% | 23.1% |
35歳~39歳 | 13.2% | 12.8% |
40歳以上 | 13.8% | 14.4% |
(参考:doda「転職成功者の年齢調査(2019年上半期)」)
さらに同調査を2007年からの推移でみてみると、転職成功者の平均年齢は右肩上がりに上昇しているのが分かります。10年ほど前と比べると、転職年齢の平均は「3歳ほど」上昇しているようです。
転職は何歳までOK?転職限界について

転職者の年齢をみてきましたが、実のところ転職ができる限界年齢はあるのでしょうか?ちまたでよく言われている「転職限界」とはなにか、解説していきます。
そもそも転職限界とは
転職限界とは、その年齢以降、転職が極めて難しくなるとされている年齢のこと。なかでも有名なのが「35歳転職限界説」です。
厚生労働省のデータを見てみると、年齢別の中途採用の方針として「35歳未満」では企業の「43.5%」が「積極的に採用強化したい」と回答していますが、「35歳以上45歳未満」になると「12.1%」にまで激減します。
(参考:厚生労働省雇用安定局「雇用を取り巻く環境と諸課題について(平成30年4月23日)」転職の現状-(参考)転職・再就職者採用の年齢別の採用方針について(P41))
これが、35歳が転職の限界と言われる原因だと考えらます。
転職限界は半分本当
年齢における転職限界は、半分は事実といえます。もう半分は、不足した情報が独り歩きし、年齢により転職の限界があると勘違いされている可能性があります。
半分本当である理由は、その年齢を超えると転職先の選択肢の幅が狭まっていく傾向があるから。たとえば「28歳」の転職限界説では、未経験の職種や業界への転職の限界のことを指していたと考えられます。
20代中盤までは、入社後のポテンシャルを見込んで採用してもらえる求人が多い傾向があります。一方、28歳をすぎると業界経験や職種経験がないと応募できない求人が増えて、未経験の業種・職種には転職しづらくなりがち。給与もキャリアも無視してイチから頑張る覚悟がないと、飛び込むのはおすすめできません。
「30歳」「32歳」と年齢を重ねるごとに、それがどんどん顕著になっていきます。もっとも有名な「35歳転職限界説」は、この年齢以降「マネジメント職や役職者としての求人が増える傾向があるため、プレイヤーとしての転職は限界」という背景が関係していると考えられます。
女性の30歳転職限界説とは
中には「女性は30歳が転職限界」という説を、見聞きした人もいるかもしれません。この限界説がある理由は主に2つあると考えられます。
職種との関連性
1つは、女性が多く就業している職種が関係している可能性です。
厚生労働省が発表している「平成28年の働く女性の状況」に関する資料では、職業別にみたとき女性は「事務従事者(女性雇用者の総数に占める割合:29%)」が最多でした。他にも多かったのが「サービス職業従事者(同:19.1%)」「販売従事者(同:13.6%)」の職業。
事務職は全職種の中でも人気が高いため、新卒者や20代の若年層からの応募も多く、30歳だと相対的に転職が成功しにくくなりがちです。
また「サービス職業従事者」「販売従事者」は体力を使う仕事のため、30歳以降になると人によっては働くのが難しくなると考えられます。
(参照:厚生労働省「Ⅰ 働く女性の状況 第1章 平成 28 年の働く女性の状況」3 雇用者-(4) 職業別雇用者数(P11))
妊娠・出産との関連性
理由の2つめは、結婚・妊娠・出産の存在です。一昔前は、女性は結婚・妊娠・出産によって退職したり、休業したりするケースがあることから、30歳を過ぎると採用されにくい傾向がありました。
ただし現在は女雇用機会均等法という法律で、性別によって雇用機会を差別することが禁止されているため、以前よりは女性の年齢が採用可否に影響することは減ったはずです。
しかし、昔のような悪しき文化が残っている企業も無いとは言えないのが現実。そのため、転職の際には年齢を考慮した戦略を立てておくと、いざという時安心です。
(参考:厚生労働省「男女雇用機会均等法のあらまし」- 2 雇用の分野における男女均等な機械及び待遇の確保等(P7))
年齢による転職限界が崩壊している2つの理由
現代の年齢での転職限界は、昔ほどではありません。前述の2019年上半期のデータでも、限界と言われた35歳以降の転職者が全体の3割ほど存在しています。
転職限界がなくなっている理由は、大きく2つあると考えられます。それは、「少子高齢化」と「定年年齢の上昇」です。
少子高齢化
1つめは、少子高齢化。若者の人口が多かった時代は、体力と伸びしろがある若者を採用したい企業も多く、実際にそれが可能でした。
しかし少子高齢化が進む現代では、若年層の人口が減っているため必然的に採用年齢を上げざるを得ないのです。
定年年齢の上昇
2つめは、定年年齢の上昇です。転職限界年齢がある理由として、長期的なキャリア形成ができない点があります。
ですが「55歳」が一般的だった定年年齢は、1994年の高年齢者雇用安定法の改正によって「60歳」が主流になりました。
さらに同法の改正により、希望者は「65歳」まで雇用することが義務化され(2012年)、直近2020年3月には70歳まで働く機会を確保することが努力義務になりました。こうして定年年齢が上昇したため、長く企業に勤められるようになったともいえます。
これにより転職者の平均年齢が上昇し、かつての年齢限界も変化していると考えられます。
転職に年齢が関連しているのも事実
現代の転職の限界年齢は、昔ほどではないと分かりましたか?しかし転職するときに、年齢をいっさい無視していいかというと、そうでないのも事実です。
企業側の立場で考えると、スキル・経験が同等の20代と30代の人材が同時に応募してきたとしたら、どちらを採用したいでしょうか?長期的な戦力化・キャリア形成を考えると、やはり20代に軍配が上がりやすいのは想像できるでしょう。
また若年層が採用されやすい背景として、「年上の部下」が生まれるのを避けたい企業側の考えもあります。年下の部下ができると、上司は仕事がしづらく感じる傾向があるからです。これらのことから転職する際は、年齢を考慮した戦略をとる必要があるのです。
戦略については後で詳しくお伝えします。
職業別の求める年齢は?

転職者の平均年齢は、全体的に上昇傾向にあります。次は転職するときに求められる年齢を、職業別でみていきましょう。
転職年齢は職種によって違う
転職年齢は、職種によって大きく異なります。転職者の平均年齢が最も高い職種は「企画・管理系(35.0歳)」でした。
最も転職年齢の低い「販売/サービス系(28.9歳)」と比べると、6歳ほどの差があることがわかるでしょう。「企画・管理系」に続いて、「専門職系(34.4歳)」、「技術系(建築/土木)(33.4歳)」の順で転職年齢が高いこともみてとれます。
1位「企画・管理系」、2位「専門職系」は、過去10年間ほどで3歳~4歳程度の上昇しているように特徴的です。
職種別では全体的に上昇傾向ですが、中には下降気味の職種もあります。「技術系(建築/土木)」は3位でありながら、4年ほど前を境に急速に下降しているのが特徴的です。
また「技術系(電気/機械)」も同様に下降傾向。「販売/サービス系」「クリエイティブ系」「事務・アシスタント系」「技術系(医療・化学)」の転職年齢は横ばいに推移しており、全ての職種が上昇傾向にあるわけではないことがわかります。
(出典:doda「転職成功者の年齢調査(2019年上半期)」)
年齢に合わせた転職活動方法のすすめ

転職活動は、年齢に合わせた戦略をとる必要があります。次は年齢ごとの転職活動の方法をご紹介していきます。
20代はやる気と熱意でキャリアチェンジもOK
20代までの転職は、未経験の職種や業界へのキャリアチェンジも可能です。ポテンシャル採用として入社後の長期的な戦力化、キャリア形成が可能だからです。
また一般的には若年層のほうが業務の習得が早く、年齢を増すごとに新しいことを覚えるのが難しくなると考えられていることも、20代が未経験職に就きやすい理由の1つです。そのため20代の転職の方法としてはしっかりと自己分析をし、長期的なキャリアを見据えて、新たな業界・職種にチャレンジするかどうかを見極めることが重要になってきます。
面接や応募書類で、「やる気」「熱意」を伝えれば採用率は高まるでしょう。もちろん応募職種での経験や能力があり、即戦力となれる人材であれば鬼に金棒なのは言うまでもありません。
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30代前半は同業界同職種で即戦力性をアピール
30代前半での転職活動は、即戦力人材かどうかが鍵になっています。20代と比較して、年上部下になる可能性も高いですし、長期的なキャリア形成の点でも見劣りするからです。
そのため30代前半の転職は、同業界同業種で転職先を探すことで成功率は高まると考えられます。面接や履歴書・職務経歴書では、現職での実績を具体的数値で提示してください。
またその実績が応募企業でどのような利益を生み、会社に貢献できるかも併せて伝えるのが即戦力アピールになります。
30代後半はマネジメント経験と謙虚さを
30代後半の転職活動は、マネジメント経験や役職経験が必要になる傾向が強まります。
一般社員として実務をする、いわゆるプレイヤーとしては、若年層よりも処理能力に劣る傾向があることや、年上部下になる可能性が高まることがその一因でしょう。
そのため30代後半の人が取るべき転職方法としては、マネジメント経験・役職経験を全面的にアピールするのが重要です。
もし30代後半でマネジメント経験がないのに転職を考えている場合は、年収面を妥協するか、もしくは転職自体を考え直す必要があるかも知れません。
また年上部下になりやすい年齢層でもあるため、扱いにくい印象を与えないように「謙虚さ」もアピールするようにしましょう。
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「専門職」「マネジメント職」はすべての年齢で有効
前述のdodaの調査でも分かる通り、「企画・管理系」や「専門職系」は転職年齢が比較的高い傾向があります。
これはつまり、「この職種であれば年齢が高くても転職がしやすい」ということです。専門職系とは、IT系のエンジニアやプログラマーなどの専門性が高い職種や、専門資格が必要な職種のこと。
企画・管理系とは、企業における上層部の役割、つまり経営企画・事業戦略の策定や、管理部門(人事・総務・経理)などの職種を指します。専門的なスキルをつけることと、企画・管理系の経験を積むことは、どの年代でも役に立つ経歴になります。
年齢に合わせた転職サイト・エージェントを使おう
転職活動をするとき、かならずと言っていいほど利用するのが転職サイト・エージェントでしょう。ここで気をつけて欲しいのが、年齢に合わせた転職サイト・エージェントを使うことです。
たとえば20代の第二新卒者・既卒者に専門特化しているところもあれば、30代以降のミドル層に強いところもあります。年齢に合わせてこの転職サイト・エージェント選びをしないと、マッチした求人がみつからずに転職がスムーズに進まない可能性があるのです。
そのため転職サイト・エージェントを選ぶときは、どの年齢層を得意としているか?を確認してから、利用するようにしてくださいね。
おすすめの転職サービスはどこ?
実際に、どこを使えばいいのでしょうか。転職サービスは数多くあるため、無料登録してみてサイトやエージェントとの相性を知っていかなければいけません。
少し手間ですが、複数サービスを利用してみて自分に合ったところを使っていくのがおすすめです。すぐに相性がいいところと出会える場合や、なかなか出会えない場合どちらも考えられます。
おすすめ転職サイト3選
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まとめ
転職と年齢の関係を、さまざまな視点からみてきました。最後にまとめておきましょう。
- 転職している人の平均年齢は31.7歳(2019年上半期)
- 転職成功者の平均年齢は、ここ10年間で上昇傾向にある
- 転職限界と言われている35歳以上での転職成功者は全体の3割もいる
- 職業によっても転職年齢はちがう
- 転職年齢は高い順に「企画・管理系(35.0歳)」「専門職系(34.4歳)」、「技術系(建築/土木)(33.4歳)」となっている
- 30代前半は即戦力性、30代後半以降はマネジメント経験をアピールするなど、年齢に合わせた転職方法をとる必要がある
- 転職サイト・エージェントは、年齢に合ったところを選ぶのが重要
転職を考えるとき、年齢を考慮した方法を取ることは必要です。ただ一昔前ほど、年齢を意識する必要がなくなってきているのも事実。
年齢によって一概に転職を諦めることはせずに、自分の年齢に合わせた方法をとりながら、転職活動を進めるようにしてくださいね。